会計と財務 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter7-8

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会計と財務・第8回 ストックオプションの付与手続

今回は前回に続いて、新株予約権の付与手続などについてみていくことにしましょう。新株予約権については、会社法の第236条~294条で定められています。新株予約権の付与は、(1)募集事項の決定、(2)通知、(3)割り当ての順番で行われます。以下、順に見ていきましょう。

募集事項の決定

まず、新株予約権を発行する際には、原則として株主総会の決議により、次のような募集事項を定めることになります(会社法238条)。ただし、譲渡制限会社の場合は株主総会特別決議を経ることになります。

  • 1.募集新株予約権の内容及び数
  • 2.募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
  • 3.前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権1個と引換えに払い込む金銭の額)又はその算定方法
  • 4.募集新株予約権を割り当てる日(割当日)
  • 5.募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
  • 6.募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第676条(募集社債に関する事項)各号に掲げる事項
  • 7.前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第118条第1項、第777条第1項、第787条第1項又は第808条第1項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

通知

会社は新株予約権の申込者に対して募集事項等を通知し、申し込みを受け付けることになります(会社法242条)。新株予約権の申込者に対して次の事項を通知しなければなりません。

  • 1.新株会社の商号
  • 2.募集事項
  • 3.新株予約権の行使に際して金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
  • 4.前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

割当て

会社は、申込者の中から募集新株予約権の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集新株予約権の数を定めます(会社法243条)。また、会社は、割当日の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集新株予約権の数を通知しなければなりません。
 割当てを受けた者は、割当日に当該各号に定める募集新株予約権の新株予約権者となります(会社法245条)。

税制適格ストックオプション

ストックオプションは原則として、権利を行使した時点で行使時の時価が権利行使価額を上回っている部分について給与所得として課税され、また当該株式を売却した時点で、譲渡価額と権利行使時の時価との差額部分について譲渡所得として課税がされます。

ただし、税制適格ストックオプションの場合、権利行使時の課税は繰り延べられるというメリットがあります。この場合、株式売却時に売却価額と権利行使価額との差額に対して譲渡所得として課税されることになります。

ストックオプション税制の優遇措置を受けるには、付与されるストックオプションが下記の要件を満たす必要があります。

付与対象者 ストックオプションの付与決議のあった株式会社又はその株式会社の関係法人の取締役、執行役又は使用人である個人又はその相続人。ただし、付与決議日において、大口株主(非上場会社において発行済株式数の3分の1超を有するもの、上場会社の場合は10分の1超を有するもの)及びその配偶者その他の特別な関係がある個人は対象とならない。
権利行使期間 付与決議の日後2年を経過した日から付与決議の日後10年を経過するまでの間
権利行使価額 ストックオプションに係る契約締結時の1株当たり価額以上
権利行使価額の制限 年間1200万円を超えない
新株予約権の発行価額 無償であること
譲渡制限 新株予約権の譲渡が制限されていること
調書の提出 ・ストックオプションを付与した日の属する年の翌年1月31日までに本店所在地の所轄税務署長に、特定新株予約権の付与に関する調書を提出すること
・株主名簿管理人にも同日までに所定の調書を提出させること
その他 権利行使(株式の交付)においては、会社法第238条第1〜3項に反しないこと
発行会社と金融商品取引業者又は金融機関との間で、株主名簿管理契約を締結していること
付与決議時の議事録及び上記書類の保存

ストックオプションを付与する場合、法的関係が複雑であったり、権利行使価格の決定等に高度の判断が必要な場合がありますので、弁護士や公認会計士などの専門家からの助言を受けるのもよいでしょう。

(矢澤利弘)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。今回で、財務パートは終了しました。

イノベーションはこうして起きる! 第11回入居者セミナー(3月29日)開催のご案内

インキュベーションセンタースタッフです。早稲田界隈ではつい数日までコートの襟を立てて実を縮こまらせながら歩いていたのが、急に桜が咲くようになりました。一方でスギ花粉の飛散量も多く、マスクが手放せない方も多くなっています。

さて、2012年度最終回となる3月29日の入居者セミナーでは、Cardinal Consultingの黒田豊氏を講師として、「Siri物語」というタイトルにて講演を行います。

「iPhone」などを利用しているアップルユーザーになじみ深いSiriは、Appleが2年ほど前にiPhoneに導入したパーソナル・アシスタント。もともとはSRI Internationalからスピンオフしたベンチャー会社Siriについて、語っていただきます。米国のイノベーションがどのように起こっていくかのダイナミズムを感じられるこの機会、ぜひご参加ください。

開催概要
件名 インキュベーションセンター 入居者交流会
主催 早稲田大学インキュベーション推進室
日時 2013年3月29日(金) 18:30~20:00
(19:00から交流会)
※通常より1時間遅くスタートします
内容 講師:Cardinal Consulting 黒田豊氏「Siri物語」
会場 インキュベーションセンター オープンスペース
参加対象 入居者、コミュニティ会員、ゲスト、推進室関係者 ほか
定員 30名程度

参加申込みにあたっては、事前の参加予約が必要です。お手数ですが、参加ご希望者名、ご所属(早稲田大学学生は、学部学科名または研究科名、学年。早稲田大学教職員は、本属および役職)、ご連絡先(電話番号および電子メールアドレス)をご記入のうえ、タイトルを「入居者交流会参加希望」として、インキュベーション推進室事務局まで電子メールにてご連絡ください。折り返し、推進室事務所よりご案内差し上げます。事前のご予約がない場合は、入場をお断りする場合がございます。また、定員に達した場合など、予告なく応募申込を打ち切らせていただく場合があります。ご了承ください。

会計と財務 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter7-7

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会計と財務・第7回 新株予約権とストック・オプションの概要

今回は新株予約権とストック・オプションの利用法とそのメリット・デメリットについて見ていくことにします。起業家が創業者としての利潤を確保したり、後継者に株式を付与したりする手段として、新株予約権を用いることがあります。

新株予約権

新株予約権というのは、権利を行使することによって会社の株式の交付を受けることができる権利のことをいいます。ベンチャー企業が外部からの資金提供を受けると、創業者の持ち株比率が低下していきますが、創業者に新株予約権を付与することによって、持ち株比率の低下を回避することができます。また、後継者に新株予約権を付与すれば、後継者に株式を供与することが可能になります。

ストック・オプション

ストック・オプションは、自社株式オプションのうち、特に企業がその従業員等に報酬として付与するものをいいます。通常、ストック・オプションとして無償で新株予約権が付与されます。株式の価値が増加すればするほど、新株予約権の権利行使によって取得した株式を譲渡した際の利益が大きくなるため、役員や従業員の士気を高めることができます。

メリットとデメリット

ストック・オプションのメリットとデメリットについて、発行会社側と従業員側に分けて見てみることにしましょう。

  発行会社側 従業員側
メリット ・報酬の一部としてストック・オプションを利用することによって現金支出を抑えることができます。
・従業員が株式を売却するまでの一定期間は安定株主を確保することができます。
・業績の向上などによる株価の上昇(公開会社の場合)や株式公開など(非公開会社)を目指すことにより、従業員の士気を高めることが期待できます。
・株式譲渡時の時価が行使価格を上回っていれば、キャピタルゲインを得ることができます。
・潜在的な株主として、勤労意欲が高まります。
デメリット ・大量の権利行使・売却が行われた場合、株価が下落するおそれがあります。また、既存株主にとっては株式価値が希薄化します。 ・株価が上昇しなかった場合や株式公開が実現しなかった場合などには期待した利益が得られない可能性があります。

新株予約権の付与手続きの詳細については、次回にて説明します。

(矢澤利弘)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

「こういう企業を買いたい ~M&Aにおける買収側の心理~」 2012年度第9回入居者交流会【拡大版】レポート~

インキュベーションセンタースタッフです。暦の上ではとうに春の声を聞いたとはいえ、東京でもまだまだ寒さを感じる日もあります。さはいえ、七十二候では、草木萠動、すなわち草木が芽吹き始めるころとなりましたので、気持ちはすでに春めいてくる方もおいでかと思います。

さて、3月1日(金)、2012年度の第10回インキュベーション交流会を開催しました。今回は、NEC系のベンチャーキャピタル、BIGLOBEキャピタルのキャピタリスト、原 航氏を講師としてお招きし、「こういう企業を買いたい ~M&Aにおける買収側の心理~」と題したセミナーを行いました。

講演を務めた原航氏
▲講師を務めた原 航氏

講師の原氏は、NEC(日本電気)にて通信事業や法人向けソリューション事業、コンシューマ事業などを歴任し、現在はBIGLOBEキャピタル事業 開発活動(M&A、ベンチャー投資)に従事されております。

今回のセミナーでは、ベンチャーのEXIT形態の一つである「M&A」について、事業を買う側の立場から 、大手システムプロバイダであるNECビッグローブの例も交えながら解説いただきました。

まず、‘新事業を「投資」によって創出し、獲得する’という視点を軸に、ファンド投資や、直接投資のしくみ、最近のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)関連 の動きについて、具体的なケースも交えて説明がありました。

これに続いて、本題である「どういう企業を 買いたいか」についての解説に移ります。一定の歴史のある企業、特に大企業では、新規事業がなかなか社内から生まれず、事業ポートフォリオの多角化に苦労していることから、新しい事業をM&Aで買おうという動きが強くなっていることが説明され、このような現状を踏まえて、既存の企業が買いたいのはどのような企業なのかについて、説明がありました。

また、大企業からのM&A含みのベンチャーファイナンスは増加しており、従来はアーリーステージからの投資が多かったのがシードステージにまで投資の段階が遡及している点、大企業によるベンチャーの買収が増加している点、従来主流だった会社全体の買収とは異なり事業単位での買収というスタイルが増加している点などについても、解説がありました。

講演風景
▲原氏による講演風景

一般の起業家やアーリーステージ段階の企業経営者は、企業価値を高めることの重要性は認識しても、投資家がどのような視点で判断するかには、なかなか気が回らないものです。特に、手塩にかけて育てた事業をバイアウトすることは、考えたくないという人も多いでしょう。しかし企業は、その事業活動を評価してもらうことを意識しなければ、成長することはできません。その点、今回の講演では「ふだん意識しない視点」に目を向けられるものだったため、ベンチャー企業関係者には興味深い話題となり、参加者の皆さんは真剣に耳を傾けており、講演後の質疑応答も活発に行われました。今回の参加者は約20名で、その後の交流会でのネットワーキングイベントも活発に行われました。

次回のインキュベーション交流会は、Cardinal Consulting の黒田 豊 氏をお招きして「Siri物語」と題した講演を、3月29日(金)に行います。詳細が決まりしだい、このブログやWebサイト等でご案内いたします。

会計と財務 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter7-6

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会計と財務・第6回 領収書と印紙税

今回は領収書の発行方法と印紙税について見ていくことにします。領収書は、顧客などから売上代金を受領したときに、代金を受領した証拠として受け渡しする書類です。領収書は文具店などで売っている市販のものを使用してもいいですし、パソコンソフトなどで会社独自のデザインの領収書を作成してもいいでしょう。どちらにしても、得意先に渡す領収書のほかに、会社で保存しておくための控えを残しておく必要があります。

印紙税

領収書を作成する場合、記載受取金額が3万円以上であれば、印紙税の課税対象となります。印紙税の課税対象は特定の契約書や領収書など、対象となる文書が予め課税物件表として定められています。そして、印紙税額一覧表に掲げられている課税文書の作成者が納税義務者となります。印紙税は受取金額に応じて税額が定められており、原則として収入印紙を領収書などの文書に貼付し、消印することによって納税します。

課税文書に相当の印紙が貼られていないときには、その税額の3倍(ただし、調査を受ける前に、自主的に不納付を申し出たときは1.1倍)、印紙の消印がなされていないときはその印紙税相当額(1,000円未満のときは1,000円)が懈怠税として課税されますので注意が必要です。

印紙税額一覧表にある「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」の部分を抜粋してみましょう。領収書の作成に当たってはこの部分が対象となります。

記載された受取金額 印紙税額
100万円以下 200円
200万円以下 400円
300万円以下 600円
500万円以下 1,000円
1,000万円以下 2,000円
2,000万円以下 4,000円
3,000万円以下 6,000円
5,000万円以下 10,000円
1億円以下 20,000円

ただし、記載受取金額が3万円未満のものは非課税となります。

印紙税の課税対象となる領収書はあくまでも「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」とされていますので、金銭や有価証券の受け取りでなければ、収入印紙を貼る必要はありません。

印紙を貼る必要のない領収書のケース

それでは領収書に印紙を貼る必要のないケースをいくつか見ていきましょう。

クレジットカード
クレジットカードで買物をした顧客に、クレジット利用伝票(お客様控)のほか、顧客の要望により、領収書を作成交付している場合には、印紙を貼る必要はありません。
売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書は、金銭又は有価証券の受領事実を証明する目的で作成されるものです。クレジット販売の場合には、信用取引により商品を引き渡すものであるため、その際の領収書であっても金銭又は有価証券の受領事実はありません。表題が「領収書」となっていても、印紙税の課税対象となる文書には該当しません。ただし、クレジットカード利用の場合であっても、クレジットカード利用の旨を「領収書」に記載しないと、印紙税の課税対象文書に該当することになります(印紙税法基本通達別表第一 第17号文書の1)。
相殺の場合
売掛金について、自己の買掛金と相殺し、受取書を相手方に作成交付した場合も印紙を貼る必要はありません。
金銭の受取書とは、金銭の引渡しを受けた者がその受領事実を証明するものをいいます。このケースの場合、作成交付した文書は、相殺による売掛債権の消滅を証明するものであって、金銭の受領事実を証明するものではありませんから、印紙税の対象となる金銭の受取書には該当しません(基通別表第一第17号文書の20)。
また、金銭又は有価証券の受取書に相殺に係る金額を含めて記載しているものについては、当該文書の記載事項により相殺に係るものであることが明らかにされている金額は、記載金額に含めません。
消費税及び地方消費税の金額が区分記載されている領収書
消費税及び地方消費税が区分記載されている場合又は税込価格と税抜価格の両方が記載されていること等により、その取引における消費税額等の金額が明らかな場合には、その消費税額等の金額は記載金額に含めないこととされています。
例えば、金銭の領収書に、「商品販売代金29,000円、消費税額等1,450円、合計30,450円」と記載したとします。この場合、消費税額等の1,450円は記載金額に含めませんので、記載金額29,000円が印紙税の課税対象の文書となります。したがって、記載金額が3万円未満ですから、非課税文書となり、印紙税は課税されません。

(矢澤利弘)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。