会計と財務 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter7-5

Chapter7バナー

会計と財務・第5回 法人税申告書の基礎

今回は法人税申告書の基礎についてみていくことにしましょう。

法人税の計算の流れ

まず、法人税の申告書を作るための流れを大きく見ていくことにします。法人税の税額を算出するには大きく(1)会計上の計算と(2)税務上の計算という2つの計算があります。

(1)会計上の計算というのは会社内で当期利益を計算する作業です。取引を記録し、総勘定元帳を作成し、決算整理をして、貸借対照表と損益計算書という決算書を作成します。株主総会において、決算書が承認されれば決算が確定することになります。

(2)税務上の計算は、確定した決算をベースにして行います。決算書にある当期利益に税務調整を加えて税務上の所得金額を算出し、税額の計算を行うことになります。法人税額が確定すれば、法人税の確定申告書を所轄の税務署へ提出し、税金を納付することになります。

法人税申告書の種類

一般の法人の法人税申告書には、(1)中間申告書、(2)確定申告書、(3)修正申告書があります。

(1)中間申告書は、事業年度開始日から6か月間の所得に応じた法人税を予納額として申告するための申告書です。中間申告には1)前年度実績による計算方法と、2)仮決算による計算方法、の2つがあります。

1)前年度実績による計算方法は、前期分の確定申告で計算した法人税額に12分の6を乗じた金額を当期の中間申告分の法人税額として計算する方法です。また、2)は実際に6か月間の所得金額を計算して法人税額を計算する方法です。

会社はこれらのいずれかを選択することができますが、1)の前年度実績による予納額を提出期限までに納付することによって中間申告を終えることが一般的です。

(2)確定申告書は、当該事業年度開始の日から終了の日までの所得金額を計算し、その所得金額に応じた法人税を計算して申告するための申告書です。

申告書の提出期限と法人税の納付期限

ほとんどの法人の事業年度は1年ごとに区切った期間で定められています。確定申告書の提出期限は、事業終了の日の翌日から2か月以内に所轄の税務署長に提出しなければなりません。

ただし、確定申告書を提出すべき法人が、会計監査人の監査を受けなければならないことその他これに類する理由により決算が確定しないため、提出期限までに提出することができない場合には、税務署長は当該法人の申請に基づき、提出期限を1か月間延長することができます。なお、1回承認を受ければその後も適用されます。

中間申告書の提出期限は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内です。ただ、中間申告書の場合は、期限までに提出がなかった場合でも、その提出期限において前年度実績による中間申告書の提出があったものとみなされます。提出期限が土曜日や日曜日、休日だった場合には、その翌日が提出期限になります。

それでは、提出期限に間に合わなかった場合はどうなるのでしょうか。確定申告書については、申告期限が経過してしまっても申告書を提出すれば受理されます。ただし、期限に遅れた場合は期限後申告となり、青色申告の承認取消しや各種特典に関する規定の適用が受けられなくなるなど、不利に扱われることがあります。

法人税の納付期限は、確定申告書の提出期限と同じ日です。提出期限の延長申請をした場合であっても納付期限の延長は認められません。納付期限以降の期間については利子税が課税されます。また、延長申請をしないで申告期限後に納付した場合は延滞税が課税されます。

(矢澤利弘)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

会計と財務 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter7-4

Chapter7バナー

会計と財務・第4回 予算管理

今回は予算管理について見ていくことにしましょう。予算は経営計画における業績目標を達成するための数値計画です。業績目標を達成するためには適切な予算編成や経営戦略、行動計画、予算統制などが必要です。

予算を編成する目的は業績目標の達成にあります。予算の編成を通じて、戦略や行動計画を策定する計画機能、部門や役員などの意見交換による調整機能の役割を担い、予算統制をすることにより、企業構成員に企業の方向性を示す伝達機能、企業構成員に目標を与える動機づけ機能と責任明確化機能、実績と比較することによる業績評価機能と統制機能を担うことになります。

予算編成

それではまず、予算編成のポイントについて見ていきましょう。

業績目標
業績目標の決定に当たっては、過年度の業績を分析したり、現在と将来の外部経済環境と内部経営環境を分析したりすることによって、達成可能で動機づけが適切になされる水準に決定する必要があります。実現不可能なほど高い目標や過度に保守的な業績目標を設定すべきではありません。また単なる経営者の勘や希望的観測に依拠した業績目標に基づく予算は意味がありません。
予算の編成方式
経営者の意思が予算編成方針として提示され、各部門が編成方針に従って部門予算を作成し、役員間、部門間で調整を図り、全社的な予算を編成する方式が一般的だと考えられます。逆に、部門担当者の各々が作成した部門予算を単に寄せ集めたような予算編成は望ましくありません。
予算には(1)売上予算、売上原価予算、販売管理費予算、研究開発費予算、営業外損益等予算などからなる損益予算、(2)営業収支予算、営業外収支予算などからなる資金予算、(3)設備予算や投融資予算などからなる資本予算があり、(4)それらを総合した総合予算があります。
これらの予算はばらばらであってはならず、それぞれの内容が整合している必要があります。また、短期予算は中長期の経営計画に整合していなければなりません。
予算編成の見直し
予算は一度作成したら絶対にそれを貫かなければならないのでしょうか。予算の編成方式には(1)予算期間が終了するまで予算の見直しを行わない固定方式と、(2)最新の環境変化を予算に織り込み、予算期間中でも予算を修正するローリング方式があります。これらのどちらを採用するかは外部経済環境の変化の状況などを勘案する必要があります。環境変化に対応できるのはローリング方式ですが、安易な予算の修正は各部門のモチベーションを弱める可能性もあります。

予算統制

予算は編成しただけでは意味がありません。予算をきちっと守っていくことが必要です。そのため、予算や行動計画に従って業務が実施されているかどうかについて予算と実績を比較し、予算と実績に差異が生じた場合には原因を究明し、対策を講じる必要があります。

また、予算期間が終わった後には予算と実績を比較し、差異分析の結果を翌期の予算策定に活用することが大切です。これらの一連の行動を予算統制といいます。この一連の流れをP(Plan)計画、D(Do)実行、C(Check)確認、A(Act)改善、の4つに分けてPDCAサイクルと呼びます。

  • 【参考文献】
  • 日本公認会計士協会東京会編『起業家・ベンチャー企業 支援の実務』(2011年)

(矢澤利弘)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

買い手あまたになるような会社とは? 第10回入居者セミナー(3月1日)開催のご案内

インキュベーションセンタースタッフです。むやみに暖かい日があったと思うと、雪が舞う寒い日があったりと、何とも不安定な空模様が続いています。体調を崩さないようにご注意ください。

さて、第10回を数える今回の入居者セミナーでは、BIGLOBEキャピタルのキャピタリスト、原航氏を講師に迎え、「こういう企業を買いたい ~M&Aにおける買収側の心理~」というタイトルにて講演を行います。

企業の価値を判断して「こういう企業を買いたい」という視点にたった場合、どのように評価するのかを語っていただきます。起業するからには、企業価値を高め「ウチに買わせてくれ」とどんどんアプローチがかかってくるようにしたいものです。今回のセミナーで、そのツボを押さえてください。

開催概要
件名 インキュベーションセンター 入居者交流会
主催 早稲田大学インキュベーション推進室
日時 2013年3月1日(金) 18:30~20:00
(19:00から交流会)
※通常より1時間遅くスタートします
内容 講師:BIGLOBEキャピタル キャピタリスト 原 航氏
「こういう企業を買いたい ~M&Aにおける買収側の心理~」
会場 インキュベーションセンター オープンスペース
参加対象 入居者、コミュニティ会員、ゲスト、推進室関係者 ほか
定員 30名程度

参加申込みにあたっては、事前の参加予約が必要です。お手数ですが、参加ご希望者名、ご所属(早稲田大学学生は、学部学科名または研究科名、学年、学籍番号。早稲田大学教職員は、本属および役職)、ご連絡先(電話番号および電子メールアドレス)をご記入のうえ、タイトルを「入居者交流会参加希望」として、インキュベーション推進室事務局まで電子メールにてご連絡ください。折り返し、推進室事務所よりご案内差し上げます。

参加される方には、名札(ネームプレート)をご用意させていただきます。なお、事前のご予約がない場合は、原則として入場をお断りします。また、定員に達した場合など、予告なく応募申込を打ち切らせていただく場合があります。ご了承ください。

会計と財務 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter7-3

Chapter7バナー

会計と財務・第3回 ベンチャー企業の資金需要の特徴

ベンチャー企業の資金需要

今回はベンチャー企業の資金需要の特徴について見ていくことにします。

ベンチャー企業は独自のアイデアの実現や新技術の開発を経営の中核に置いていることが多いため、開発期間が長期にわたることがよくあります。そのため、長期間にわたって売上が計上されないことが多く、そうした場合には開業資金を十分に確保しておく必要があります。売上高が不十分なまま、開発を続けていくと、会社にある資金が減少していきますが、資金が尽きる前に、十分な売上高を確保できるようになれば、会社は成長を続けていくことができます。ただし、十分な売上高が計上できる前に、資金が枯渇してしまった場合、会社は存続することが困難になります。そのため、ベンチャー企業では余裕をもった資金計画を立てておく必要があります。開業当初に必要とされる資金や開業後に経常的に必要とされる資金も一般の中小企業と比較して厚めに準備することが必要となります。

開業当初においては、一定の開発要員を確保しなければならず、一定の開発環境も維持しなければなりません。また、継続して売上を計上し、代金を回収できるとは限らないため、その間のつなぎ資金も必要です。このようなことから、ベンチャー企業においては、短期よりも長期の資金、条件の有利な資金、返済が免除される可能性があるか、元々返済が不要であるような資金の活用が重要です。

成長段階に応じた資金需要

それでは、成長段階に応じた資金需要について見ていきましょう。

開業資金
事業を始めるに当たっては、会社の設立事務手続に関する費用の支払や、営業を開始するまでの間の開業準備のための支出に充てる資金が必要となります。これには事業の開始のために最低限必要となる設備や人材の確保のための資金が含まれます。また、開業したとしても、すぐに売上高を計上し、その代金が回収できるとは限らないため、その間の通常経費の支払に充てるための資金も準備しておかなければなりません。
運転資金
開業後、継続的に売上が計上できるようになっても、通常は仕入代金や経費の支払が販売代金の回収に先行するため、その間の運転資金を確保しておくことが必要です。運転資金は通常、次のように示すことができます。

 運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務(経費の未払を含む)

決算資金
決算資金は、決算後の納税や配当金の支払などに充てるためのもので、決算時に一時的に必要とされる資金です。広義の運転資金として位置づけられます。
設備投資資金と研究開発資金
事業が成長してくれば、現状の設備などを増強するために設備投資資金が必要になってきます。また、将来を見据えた研究開発のために、研究開発資金も必要になってくるでしょう。これらの資金は、その回収期間が長期にわたり、必ずしも回収できるとは限らないため、短期に返済が必要な資金ではなく、長期間の返済が可能であるか、一定の条件を満たすことにより、返済を免除される可能性のある資金で賄うことがよいでしょう。
  • 【参考文献】
  • 日本公認会計士協会東京会編『起業家・ベンチャー企業 支援の実務』(2011年)

(矢澤利弘)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。