外部専門家や各種サービスの利用 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter6-1

外部専門家や各種サービスの利用・第1回 士業サービスの利用

これまでの連載のなかで「詳細については、××士に相談しましょう」という記述が何個所か出てきました。

弁護士や公認会計士といった“資格”については、起業を考えている人でなくても、耳にする機会は多いと思います。でも「弁護士といっても、何か訴えられたときに相談すればいいや」「監査が必要な大企業じゃないんだから、公認会計士なんていらないよ」と思う人も多いのではないでしょうか。確かに、こういった各方面の専門家がいなくても、事業の過程でトラブルがまったく発生しないのであれば、それでよいかもしれません。しかし実際には、さまざまなトラブルに遭うものです。こういったトラブルを回避するため、あるいはトラブルに遭ったときに対処するために、これらの専門家の助言などを求めることは、非常に有用です。

そうはいっても、これらのさまざまな専門家については、あまり整理して紹介しているケースが多くないようです。大学生の場合「自分がこれから取得しようとする資格」という視点ではさまざまな情報を得られるのですが、ここでは、起業家にかぎらず社会生活を送る立場の者として「有資格者をどのように利用するか」という視点から、整理しておきましょう。

以下の表では、起業する前から起業後、さらに会社経営の過程で有用な専門家を挙げています。ときどき誤解する人がいますが、「××士」という肩書きで活動する人(「士業」といいます)の事業でも、実際にはその肩書きがなくとも(法律上は)誰でもできる場合もあります。例えば、会計のコンサルティングは必ずしも公認会計士でなくても誰でも可能です(実務上の知識や経験があるかどうかは別です)。

主な士業と専門家
名称 特徴 資格について 利用方法
弁護士 法律関係全般の専門家、訴訟をはじめ法律事務の受託全般が可能 業務独占資格 コストは高いが権限大きくトラブルの予防や解決に不可欠
公認会計士 監査および会計の専門家、会計全般のコンサルティングも行う 業務独占資格 コストは高いが財務会計視点の助言は有用
司法書士 登記実務の専門家、商業登記と不動産登記が中心 業務独占資格 商業登記は基本単発、法務アドバイザーとして活用する場合も
行政書士 行政庁へ提出する書類作成の専門家、許認可など法務全般に 業務独占資格 取り扱うジャンルが広いため得意分野ごとに分かれる
税理士 税務の計算および書類作成の専門家 業務独占資格 事業活動に不可避な納税に関して絶対に必要
社会保険労務士 従業員の労務および社会保険の手続きに関する専門家 業務独占資格 雇用が発生する時点で必要
弁理士 知的財産(特許や商標など)の登録や管理の専門家 業務独占資格 ビジネスの基盤となる知財の保全と活用に重要
ファイナンシャル・プランナー 個人や中小企業の資金計画立案の専門家 無制限(一部名称独占資格) 長期的な資金計画のコンサルティングに活用
技術士 各分野の技術で高度な知識や経験を有する 名称独占資格 特定技術分野でのコンサルティングとして活用
中小企業診断士 中小企業への経営診断および助言を行う 国家登録資格 公的機関の専門家に多く、ゼネラリストとして経営指導全般を担う

士業の方に依頼する前に、いちばん重要なことをひとつ。「この資格を持っているからこの業務ができる」と単純に考えてはいけません。世間的にはステータスの高い士業の方であっても、実際に相談してみると、専門知識を開陳するばかりで、画一的な回答しかくれないというケースもあります。そこまでひどくはなくとも、いわば“ソリが合わない”という場合、相手が親身にならずに義務的な対応しかしてくれない、ということもあるでしょう。そういうことがないように、その専門家の経歴や実績をしっかりと確認し、場合によっては信頼できる先輩などの紹介を経るなどして、自分のニーズにあう人を見つけ出すことが大事です。

あるいは、そもそも助言を受けたいと思っても、どんな分野の人に相談してよいかわからない、というケースもあるでしょう。こういうときは、起業支援を行う機関の窓口などに相談する方法もあります。実際にあった例ですが、「契約書のことで弁護士の先生に相談したいのですが」という相談があり、具体的にどういうことを聞きたいのか確認すると、実は契約書に貼付する印紙の額だったということがありました。この場合は、印紙税を取り扱う実務専門家として税理士のほうがよいと考え、税理士の方をご紹介しました(※弁護士法上では、弁護士も税理士業務を税理士登録無しで行うこと自体は可能です)。

具体的な専門家の活用法については、次回解説します。

(渡邉謙信)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。