契約に関する注意点 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter5-4

商品開発と営業開拓・第4回 契約に関する注意点

今回は「契約」についてお話しします。本章は「商品開発と営業開拓」、つまり事業の中心となる部分がテーマとなっています。まさに起業家(の卵)である皆さんが持つ技術やアイデア、ノウハウといったものを作ったり、売ったりという非常に大切な場面です。ただ、開発するにせよ営業するにせよ、そこにはほぼ必ずといっていいほど「契約」がついてまわります。契約はよく分からない、面倒だ、そう言って避けていては、肝心の事業も先に進まなかったり、おかしな方向に進んでしまったり…。契約の基礎知識は、是非身につけておくとよいでしょう(良質な入門書が数多く出回っています)。

今回は、特に接する機会が多いと思われる「開発業務委託契約」「営業業務委託契約」に絞って、インキュベーションセンターに日頃数多く寄せられるご相談実例から、大きなポイントとなるところを三点、ご紹介します。一般的に業務委託は、どうしても委託側有利、受託側不利となりがちです。創業初期においては、受託側、つまりお仕事をもらう側となることが多いと思います。お金が得られるからといって、委託料の金額ばかりに関心を示すのではなく、委託契約書全体をよく読むようにしましょう。


1.権利の帰属

開発業務の場合、開発成果の権利が誰にどのように帰属するのか。まずここが非常に重要です。委託側に帰属する。受託側に帰属する。両者の共有となる。色々なパターンがありますが、一般的には委託側に帰属するとされることが多いです。つまり、「作ったものの権利は持って行かれる」ということです。「自分が作ったのに?」とならないよう、よく確認、検討しましょう。


図1 権利の帰属が明確でないと、せっかくできた成果もそのままとられちゃうことになります


2.責任

何かしら問題が起きた場合を想定して、多くの契約書には責任に関する規定があります。物騒だな!と思わないでください、そもそも契約書とは、万が一に備えて作られるものです。特に、損害賠償責任とその上限がどうなっているのか。ここが重要です。「損害を賠償する責任」は、法律上定められているものですから、たとえ契約書に書かれていなかったとしても、賠償すべきときには賠償しなければなりません。問題はその賠償額です。いったいどれくらいになるのか、天井知らずでは心配ですね。そこで、契約書上で上限を設定することができます。賠償範囲を限定することもできます。自社を有利にする=相手方を不利にすることになりますので、要交渉事項となりますが、損害賠償責任は自社の大きなリスクであると認識し、契約書にどのように書かれているのか、書くべきか、是非確認、検討してください。


図2 リスクのある場所をしっかり見極めましょう


3.契約有効期間

契約はいつからいつまで続くのか。ここもまた重要です。しかし、どうも意外と意識されていないことが多いようです。いったん契約した以上、相手方との付き合いは原則として契約有効期間中続きます。最初は誰だって、できれば長くお付き合いしたいと思うものですね。しかし、もし「こんなはずじゃなかった…」となってしまった場合、つまり信頼関係が損なわれた場合、長すぎる契約有効期間や「自動更新条項」(放っておくと契約がいつまでも終わらない)はリスクとなります。創業初期においては、事業の方向性がまだ明確に定まっていない中で未知の相手方と新規契約する場合、例えば期間短めで自動更新無し、とすれば、「こんなはずじゃなかった…」契約がずるずると続くリスクを避けることができるでしょう。逆に、信頼関係が構築できた相手方とは、長期契約。相手方もきっと喜ぶことでしょう(よくプロ野球選手が「○年契約!」と報じられるのは、そういう意味です)。


図3 契約にはいつか終わりがきます

法務は「生半可な素人判断でひどい目にあう可能性が特に高い」分野ですので、自分なりの勉強+専門家の助言が望ましいです。契約書に関するご相談につきましては、「権利義務に関する書類の作成」の専門家、行政書士にご用命ください(参考:日本行政書士会連合会)。次回は「会社情報の適切な発信」についてお話しします。皆さんお楽しみに!

(薦田誠)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

いよいよ締切が迫ってきました! ビジネスプランコンテスト

インキュベーションセンタースタッフです。朝も涼しくなって本格的な秋の気配…と思ったのですが、センターの外に出るといまだにセミが元気いっぱい。今年のセミは長生きなのでしょうか。

さて、「第15回早稲田大学ビジネスプランコンテスト」の応募締切まで、あと一週間。そろそろ事務局にも応募書類が届くようになってきました。

今もなお、あれこれと応募書類を前に考えている人も多いでしょう。徹底的に考え抜き、そして時間や書式といった制限の中で、ベストを尽くしてください。あれこれ“わからない!”ということが出てきたら、ほかの人に意見を求めると、意外な突破口が開けるかもしれません。

インキュベーションセンターのスタッフへのお問い合わせも、大歓迎です。ただし、メンバーが学内の会議などでみんな出払っているということもあるので、お問い合わせの前に、電話かメールで事前にご一報くださいね。

このほかにも、さまざまなコンテストが各地で開催されています。あわせて応募し、自分の考えがどのように評価されるのか、確かめるのもよいでしょう。

※通常は木曜日に更新するところ、サーバの不具合により、金曜日の掲載となりました。ご了承ください。

営業戦略と販売あれこれ 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter5-3

商品開発と営業開拓・第3回 営業戦略と販売あれこれ

これまでの2回の連載を通じて、商品開発やそれに伴う注意点などについて、解説しました。さて、モノができたら、それを販売することになります。どんなに優れた商品が開発できたと思っても、売れない商品では意味がありません。開発した商品を売っていくには、営業戦略を作り、そして実際に製品を販売していくことになります。今回は、営業戦略と、製品の販売のポイントについて説明します。なかなかポイントがつかみにくいものですが、きちんと整理立てて説明しますから、ご心配は無用です。一部、Chapter3-2および3-3のおさらいになります。


脱「わからん!」 〜営業戦略の勘どころ〜

ひとくちに営業戦略といっても、営業の方法は、業界によってまちまちです。

例えば、精密機械の部品を製造するメーカー、主要な駅前に展開しているスーパーマーケット、週刊誌を発行している雑誌社、Webサービスを展開している企業、こういった企業に勤めている人に、営業のやり方について聞いてみると、それぞれまったく違う答えが返ってくるでしょう。業種いろいろ、それに応じて方法もいろいろ。これでは、ゼロから始める人にとっては、途方に暮れてしまいます。営業戦略と言われても「わからん!」となりそうです。

アルバイトで店舗営業をしたこともあるから、営業なら何とかなるよ、と思う人もいるかもしれません。しかし、別の業種で事業を展開しようとすると、前のノウハウがそのまま生かせるということは、まず期待できません。例えば、あるコンビニでお客さんのニーズが的確に把握できるようになった人でも、居酒屋のカウンターでお客さんが何を求めているかを瞬時に理解できるわけじゃないですね。つまり、営業経験があっても、別の土俵に移ると、やっぱり営業戦略など「わからん!」となるかもしれません。

そこで、まずは基本に返りましょう。営業を考える際に、どのような業種であっても考えるべき共通点は、「誰に」「何を」「どのように」売るか、という3つのポイントです。

「誰に」=顧客は誰か。どんな人が興味を持ってくれるのか、どんな人が使ってくれるのか、どんな人が買ってくれるのか。営業を手がけるには、誰、という視点を常に持つことが必要です。「いいモノだからみんなに使ってほしい」では、そもそも誰にも見向きもされないものです。八方美人は無意味です。

「何を」=その商品は売り物になるか。お客に買ってもらうために、商品のブランドをきっちり定めるとともに、その商品がどのようにユニーク(ほかとは違う固有)な要素を持っているか、きちんとアピールしなくてはいけません。営業活動の際には、自社製品の強みについて、競合他社の製品などとの差別化を含め、堂々と胸を張って説明できるようにしましょう。

「どのように」=低コストで安全供給できるか。製造などにかかるコストをどの程度無理なく抑えることができるか、その際に製品の品質は維持できるか、また途中で生産が止まったりせずに安定して販売できるか。綱渡りのような形で注文に対応するようでは、安心して販売できませんし、顧客も「この会社大丈夫なのか?」と思うでしょう。コストと安定性のバランスを取ることは重要です。

ここまで整理できれば、あとは各ポイントを基に、いろいろと試行錯誤すればよいでしょう。魚釣りをする場合は、餌を変え、場所を変え、竿を変え、といった具合に、やりながらいろいろと変えていきますね。それと同じです。


学生相手の商売にこだわらない

これまで、大学生を対象としたビジネスプランコンテストへの応募申請などをたくさん見てきましたが、この中には、大学生を主要顧客として事業を展開するというプランがかなりの比率で見受けられます。おそらく、自分にとって「これがあったらいいな、これができたらいいな」という発想からスタートしたためでしょう。しかし、大学生を主要ターゲットとして成功する例はごく稀です。事業化した場合、その多くはビジネスプランを抜本的に変えており、軌道に乗ってもローカルなサービスのままに留まるケースが多いのです。事業拡大を広いウイングで展開していくのなら、あるいは事業活動を通じて社会貢献をしたいと思うのなら、学外に出ましょう。学生相手の商売にこだわっては、頭打ちになると思っておいてよいでしょう。


フローとストックを見落とすな! 〜在庫管理と流通方法にも目を〜

製品を販売するとしても、売るためのものをストックしたり、運んだりという作業はどうしても必要です。ともすれば見落としがち、いや「見なかったことにしたくなりがち」ですが、きちんと押さえておきましょう。

在庫管理

モノを販売していく場合の在庫というものは、なかなか取扱いが難しいものです。

当然ながら、在庫が不足すると、売れません(=機会損失)。お客さんが来ても「すいません、もう売り切れなんです…トホホ」となるわけです。収入減になるのはもちろん、どこの店頭でも見かけなければ、消費者やバイヤーの目にも当然止まらなくなるわけで、認知度向上の妨げにもなります。商売をやっていくのですから、売れるものは切らさないようにすることが大事です。

一方で、在庫が過剰だと、持っているだけで負担になります(=コスト原因)。「オフィスまで在庫でいっぱいだよ、どうしよう」となっては、倉庫代など保管費用が固定費として、事業運営に重くのしかかります。また、市場が変化すると製品が陳腐化しますし、特に季節的要因が強いと、時機を逸すればたちまち不良在庫化します。

こういった事態を避けるために、生産段階で市場予測を慎重に見極めることが求められます。もちろん、言うは易く行うは難しですが、欠品続きになっても、在庫の山になっても、どちらもいけません。

いちばん危険なのは、販売が好調のときです。「え? 好調なら在庫がなくなるからいいんじゃないの?」と思うでしょう。しかし、販売実績が順調だと、つくればつくるほど売れるという錯覚を基に、過大な設備投資に走って首が回らなくなるということがしばしばあり、これは企業の破綻要因として非常に多いケースなのです。売れているときこそ、在庫管理はしっかりしないといけません。

在庫管理というファクターは、モノを販売するビジネスでは、規模の大小を問わず、絶対に不可欠なものです。したがって、「在庫の適正管理」ということを、常に意識して製造を行う、これが基本です。また、在庫に伴うリスクを低減するため、在庫コストを抜本的に下げるビジネスモデルを考えるというのも、ひとつの方法でしょう。「避けて通れないなら極小化してしまえ」という発想ですね。重ねていいますが、売れるからと喜んでいると、気がついたらたいへんなことになるケースが多々あります。注意しましょう。

流通方法

モノを販売するとき「右から左に流して上前をはねる」なんて言い方をする場合があります。商売をなりわいにしている人に対して何とも失礼な言い分ではありますが、モノを右から左に流すだけで、お金がかかりますし、到着の遅れや痛みといったリスクも増えます。したがって、流通というプロセスを最適化しようとすれば、そこに求められるのは「低コスト化」と「効率化」の2点だ、といえます。

低コスト化は、詳しく説明するまでもありませんね。開発や製造のプロセスで低コストを実現しても、輸送コストが高いと、顧客に渡る価格は結局同じ、となっては、何にもなりません。また、運送代そのものだけでなく、流通管理そのものにもコストがかかる点にも、気を払っておきましょう。

効率化という側面では、速く顧客のもとに商品を届けることが必要ですが、それだけでなく、納期に確実に間に合わせるようにすることは、もっと大事です。注文を受けました、しかし商品がいつ届くかわかりません、では、商売になりませんね。速度と安定の両面で効率化を図る必要があります。また、商品だけでなく、製造前の部品調達についても同様です。

この2点を最適化するには、どうすればよいでしょうか。

流通も、実は業種によってさまざまな形態があります。特に、卸業者が緻密なネットワークを持っていて寡占状態にあるような業種もあります。実際には、既存の卸業者などを仲介して販売店に出してもらう方法と、物流(運送)のみを他社に依頼しそのほかは自社で行う方法があります。

いずれにせよ物流では複数の企業を介することになるので、それら各業者との関係構築が必要です。海外からの輸入業で聞いた事例ですが、安い業者だからといって安易に取り引きすると、商品が途中で別のものにすり替わっていた、などというおそろしい例もあります。これは極端な例ですが、自社だけで最適化できるわけではありません。規模が大きくなると、SCM(サプライチェーンマネジメント)という概念を使い、需要に応じて最適な生産と最適な在庫を計算し、部品調達から販売まで、業者を越えて一貫したマネジメントを行う手法が定着しています。

流通というと、先述の通り「右から左へ」的な視点で考えてしまい、ともすれば「そのときどきで安ければよい」と思いがちです。しかし、流通も市場と同様に生き物と考えてください。製品の性質や顧客の属性に応じて、最適な方法は常に変わっていくのです。事業規模が大きくなってから考えればいいや、といった発想は禁物ですよ。

(耒本一茂)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

あなたの思いをぶつけてください! ビジネスプランコンテスト

インキュベーションセンタースタッフです。

先週もご案内したとおり、「第15回早稲田大学ビジネスプランコンテスト」の応募締切(9/28金)が迫ってきました。応募用紙を開きながら「なかなか書けない!」「なかなか絞れない!」と考える方も多いでしょう。

これも先週ご案内しましたが、応募用紙に記入できる量(文字数)は、決して多くありません。そこに思いの丈をぶつけて、さらに説得力のあるプランとして説明するのは、たいへんな作業だと思います。まずは、応募用紙にとにもかくにも、何でも書き込んでみましょう。もし書くべき内容が多すぎてあふれ出そうなら、白紙やブランクページなどに箇条書きにしてもかまいません。まず書いてみることです。

考えたことを出し尽くしたと思ったら、「伝えなければいけない重要なポイント」と「目をとめてもらえそうなキーワード」をピックアップし、それに基づいて整理していきましょう。この整理は、何も書き出した直後にやる必要はありません。考えられるかぎりのことを出し切って1日おくぐらいのほうが、頭が冷静になって、トピックを合理的に取捨選択できるようになるかもしれません。もちろん、あまり間を置いてしまうと、何が言いたかったのかといういちばん大事なことを忘れてしまうことにもなるので、ほどほどに。

書類がひととおりできたら、今度は、自分がどのような事業を興したいと考えているかについて、「まず資料がなくても相手に興味を持ってもらう」ことを意識しながら、口に出して言ってみましょう。もちろん、数字がびっしり書き込まれた資料をそのまま暗記して読む必要はないですよ。「やりたいことは、ずばり、コレです!」と言えればよいのです。その一言がいえるかどうか、それで決まる、といってよいでしょう。

読んでおもしろい、聞いて興味深い、そんなビジネスプランを、待っています。

商品開発の注意点あれこれ 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter5-2

商品開発と営業開拓・第2回 商品開発の注意点あれこれ

前回の連載では、商品開発とメンバーについておおまかに説明しました。しかし、商品開発にあたっては、いろいろと意識しておきたい注意点があります。今回は、前回だけで説明しきれなかった部分を、いろいろと補足していきます。


商品開発の注意点

まずは、商品を開発する際に、注意しておくべきポイントがあります。

注目! アイデア出しはこうしましょう

商品開発にあたっては、どんなものを作ろうかと考えてアイデアを出すことになりますが、メンバーが集まってアイデアを出し合い、それを練り上げていく方法には、いろいろなものがあります。まずは、次の2つの方法を押さえておきましょう。

ブレインストーミング法

Chapter2-4で紹介した方法です。自由奔放、批判厳禁、質より量、上乗せ歓迎という基本原則で、突飛なものも含めて数多くのアイデアを持ち寄ります。
KJ法

思いついたアイデアをカードに書き込み、その書き込んだ内容ごとにグルーピングして、体系的に図式化していくもの。数多くのアイデアが出た場合、それぞれの関係を明確にすることでコアとなるポイントが浮き出て、意味や構造がはっきり見えるようになります。課題の本質を見抜いた上で、新たな発想につなげることができます。Chapter2-4で紹介したマインドマップ法と似ていますが、整理のための分類をはっきりさせるトップダウン型のマインドマップ法とは異なり、まずは数多くアイデアを出して、後から整理するボトムアップ型の方法です。

第六感? 偶然の気付きも侮れない

商品開発を行う際には、面白いことに、偶然の気付きが斬新な商品につながることもあります。何かを探しているうちに、ふと(直接関係ない)新しいものに気付いたり、新しいことを発見したりすることがあります。このような能力を「セレンディピティ」といいます。こういった気付きを喚起するには、固定化した会議を重ねたりするのではなく、柔軟な発想が生まれやすい刺激的な環境を用意するのがよいでしょう。シリコンバレーのITベンチャー企業では、従業員があちこち動き回れるようにオフィスを設計することが多いのですが、これもセレンディピティを涵養するためなのです。

次に、数多くのアイデアから、具体的なものへと絞り込みを行っていきます。このときには、独りよがりを避けるため、第三者的な視点で評価することが必要になります。社長が一人で判断すると、どうしても個人の主観が強くなってしまうため、何らかの客観的な指標(評価基準)を定めた上で判断しましょう。

拙速歓迎! カンペキ主義はカンシンしません

商品開発を実践する上で重要な点として、必ずしも最初から完成度の高いものを目指さない、ということがあります。「え、未完成品を出しちゃってもいいの?」と思うかもしれませんが、さにあらず。その真意は、荒削りでもよいのでまずはモノを出して、それを基にさまざまな人の意見を聞くなどして粘り強く改良を重ねていく、ということです。もちろん最初から完成したものができれば、それに越したことはありませんが、完成度をあまり意識しないようにしましょう。

開発メンバーの顔ぶれは

必要なメンバーについては、全員を社内のメンバーで固める必要はありません。外部の人的リソースをうまく活用する方法もあります。公式の組織と無関係な(インフォーマルな)人間関係が、よい刺激をもたらすという効果もあります。考えてみて壁に当たったら、その分野で明るい専門家に相談したり、コンサルタントを活用したりすることもできます。ただし、商品開発のアイデアやノウハウが外部に流出しないよう、一定の注意を払っておきましょう。


知的財産権にも注意しよう

商品を実際に世の中に出す際には、知的財産権について理解を深めておく必要があります。知的財産権は、主に産業財産権(特許権・実用新案権、意匠権、商標権など)および著作権がありますが、研究開発には特許権が、販売やブランディングには商標権が重要になります。

知的財産について意識をしていないと、自社製品とよく似た製品を他社が販売しても対抗措置を講じられなくなったり、ある技術が他社により特許出願されていることに気付かずに製造していまい特許権者から多額の請求を受けたり、ということが起こります。これを防ぐには「先行調査」「権利化」を行います。

まず、開発しよう、あるいは販売しようという商品について、過去に類似の商品や技術がないか、また競合商品が特許を取っている技術を使っていないか、そういったことを確認します。また、商品の名称を考える際には、すでに別の会社で同じ商品名が使われていないか、あるいは使うことを前提に商標登録されていないかを調べます。これが「先行調査」です。これは「電子特許図書館(IPDL)」で調べることができます。

もし自社で開発した技術が特許出願されていないのであれば、自社で特許出願して、他社に無断で利用されるのを防ぐことも検討しましょう。また商品についても、ブランドを確立させるためには、主なものについては商標出願するというやり方も有用です。このように、技術を特許などとして、また名称を商標として自社のみが独占的に使えるようにすることが「権利化」で、これによって参入障壁が高くなります。ただし、権利化にはお金も手間もかかりますし、商品化できない特許技術は経営の重荷になることもあります。まずは、新しい技術を生み出したら、特許化できるか、できるなら権利化するかどうかを検討しましょう。

特許を初めとした知的財産については、弁理士に相談しましょう(詳細は、日本弁理士会Webサイトをご覧ください)。


学生起業家のメリットとデメリット

商品開発をする中で、また営業開拓を行う過程で、学生という立場はどう影響するのでしょうか。学生であることのメリットとデメリットを見極めることが、学生起業家が成功するための第一歩になります。

学生であることのメリットは、なんと言っても「若さ」につきます。漠然としていますし、何よりも学生本人にとってみれば、自分の強みが「若さ」といわれても「それが何か?」という程度にしか思えないかもしれません。しかし、斬新なアイデアを出すことができるのはもちろん、失敗をおそれずにテキパキと行動に移せる力は、やはり若いがゆえにできること。これが結婚して子供を育てる年代になれば、まず家族を養うことを第一に考えつつ経営にあたることになるわけで、攻め一辺倒とはいきません。オジサンオバサンには絶対にマネできないメリットを、どんどん生かしましょう。

一方、学生であることのデメリットは何でしょうか。社会人経験がない、特に会社勤めの経験がないと、ビジネスの基礎的なことを知らないまま事業を行うことになります。例えば、ビジネスマナーはもちろん、組織の作り方や管理、会議の運営、金銭の管理、などなど、企業経営以前に事業活動をする上で必要最低限の知識や経験がない状態でのスタートを強いられます。でも、おそれてはいけません。さまざまな人に相談して支援者を見つけ、適切な助言をくれる人や、会社経営に必要なスキルを持った人などを巻き込んで、チームを作っていけばよいのです。これらのデメリットは、十分に解決可能です。

結論としては、学生にも、起業と経営は十分にできる、ということです。ただし、学生ならではのハンデがあるのも事実なので、それに対処するべきと、心掛けておきましょう。

学生が起業するケースに限った話ではありませんが、経営者が優れた商品を世に送り出すには、逆境でも諦めない粘り強さ、他者の意見を聞く謙虚さと素直さ、そして常に新しいことにチャレンジする意欲です。もちろん、経営者としてのプライドや頑固さが必要となる局面もあるでしょう。いずれにせよ、企業経営がうまくいくかどうかは、社長しだいなのです。

(耒本一茂)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

ビジネスプランコンテストの応募締切まで、あと1か月を切りました!

インキュベーションセンタースタッフです。

9月に入り、「第15回早稲田大学ビジネスプランコンテスト」の応募締切も、あと1か月を切りました。そろそろ、ビジネスアイデアは固まってきたころでしょうか? アイデアがある程度まとまったら、市場や顧客の動向、売上の予測、要員の量、などなど、具体的な数に落とし込み、応募用紙に書き入れてきましょう。

応募用紙に記入できる量(文字数)は、決して多くありません。「これだけでは、自分のアイデアは伝えられない!」と思うかもしれません。そういう場合は、まず「何をやりたいか」「何を見せたいか」「何を手に取ってもらいたいか」などなど、「何を(What)」を軸にシミュレーションしてみましょう。そうすれば、それまでの考えのアピールポイントやウイークポイントが見えてきます。

また、最初の応募の時点ではまだ必要ではありませんが、プレゼンテーション用のデータも作り始めましょう。人に見せることを意識することで、自分でも「これで伝わるかな?」と思えるものです。形にしないで頭の中だけで考えていては、よほど思考の整理に長けた人でないかぎり、“自分の都合のよい形”で満足してしまうものです。まず、自分が見て納得できるようにすること。自分で「?」と思ってしまっては、ほかの人が見ても納得できるものにはなりません。

なお、早稲田大学ビジネスプランコンテストのほかにも、学生起業家を対象としたさまざまなコンテストやイベントが開かれています。お勧めできるものは、このブログでも紹介していきます。学生のみなさん、どしどし応募してみましょう!

商品開発の第一歩 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter5-1

商品開発と営業開拓・第1回 商品開発の第一歩

Chapter4では創業前の準備と法人設立について解説しました。本日より始まるChapter5では、事業活動の肝となる商品開発と営業開拓について説明します。まずは「商品開発」に必須となる基本的事項を整理し、それを基にどのように売っていくかという「営業開拓」について説明し、さらに事業展開の注意点について触れる、という流れになります。


1.商品開発の方法

事業を行うには、当然ですが売上が必要です。この売上は、製品やサービス(以下、まとめて「商品」と表記します)を顧客に提供することで得られます。では、その商品は、どのようにすれば“売り物”として適切なものになるのでしょうか。

商品開発の進め方は、どのような事業をするかによって違ってきます。例えば、製造業ならば「どんなモノをきちんと作るか」、流通業ならば「どのようにモノを仕入れて販売するか」など、さまざまですね。しかし、まずは経営者本人がやりたいこと、あるいは経営者自身の強みを生かせるテーマを軸に、アイデアを発掘していきましょう。事前にテーマを絞ることなくアイデアをどんどん出していくという手法もありますが、創業したばかりの段階であれもこれもと考えると“あぶはち取らず”になり、うまくいきません。まずは、テーマ選定を優先する方法を紹介します。

テーマが決まったら、商品のアイデア出しを行い、“ぜひやってみたい!”という観点から優先順位を付けます。さらに、販売したときに得られる粗利(あらり)を計算したり、商品化に伴う制約条件等を考慮したりするなどして、絞り込んでいきます。すなわち「どのような商品にするか」という観点で、アイデアを煮詰めていきます。

さて、商品だけできても、意味がありません。「いいモノができた、これは売れる!」という発想は禁物です。売るべき商品がイメージできたら、マーケティング分析を行うとともに、損益分岐点計算などの方法でコストや生産量を算出し、事業化を検討します。言い換えれば「どのように商品を売るか」という観点で、戦略を立てるのです。

こうしてビジネスモデルの骨格が出来上がったら、製作に取りかかり、商品として売り物になるか、販売できる体制は整っているかといったテストを重ね、顧客に提供できる商品としての完成度を高めていきます。

これらのフローを整理すると、以下のようになります。

図1 商品開発のフロー


2.チームプレイとメンバーの役割

会社の構成員は社長1人だけ、というのなら、自分の判断と努力だけですべてを進めていくこともできます。しかし、1人だけでできることには、当然ながら限度があります。能力や意欲のあるメンバーを集めて事業に加わってもらうことが必要になってきますが、それだけではなく、開発を効果的に進めるためにチームプレイを発揮することが鍵となります。では、どのようなスキルを持った人材をどのくらいの頭数集めればよいのでしょうか。

人材が何人必要なのかは、これからやろうとしている事業内容や作業局面によって大きく変わります。いきなり大勢で始めてもなかなか意見がまとまらないケースが多いので、創業時には志を共有できるメンバー(3〜5名程度)が理想と考えられます。

続いて必要となる人材の種類ですが、作業局面について具体的なイメージを描き、アイデアをいろいろと出してくれるメンバー、業界や市場の特性をよく理解しているメンバーなど、事業を成長させるにはどんな人材が必要かを考えましょう。

そこから先は、出会いと運、タイミングによるところがありますので、とにかく探し続ける姿勢が重要です。

次回も引き続き、商品開発の注意点などを中心に、ポイントを解説していきます。

(耒本一茂)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。