起業の準備と法人設立 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter4-2

起業の準備と法人設立・第2回 会社の種類

さて起業の決意ができましたら、次に考えるのは「会社の種類」です。

いちばん初めのChapter1-1の復習となりますが、会社の種類には、最も一般的な「株式会社」の他に、「合同会社(LLC)」、「合名会社」、「合資会社」があります。それらのなかから、自分のビジネスに合うのはどれか、ここは下の表を参考に考えてみましょう。なお、この表に出てくる「社員」とは、会社に出資する者のことで、法律上はこの意味で使われます(従業員ではありません)。

会社の種類と特徴
会社の種類 株式会社(おすすめ!) 合同会社(LLC) 合名会社 合資会社
イメージ 最もおなじみ! 日本の会社の96%以上 さて、何でしょう? 老舗の会社形態? 知名度は低いぞ
性格 物的(財産重視) 人的(出資者である個性が重視)
設立に必要な最低人数 1人 1人 1人 2人
役員 1人以上 役員という概念はありません。業務は社員(業務執行社員)が行います
出資者の責任範囲 有限責任 有限責任 無限責任 有限責任または無限責任
最高意思決定機関 株主総会 全社員の合意

合同会社(日本版LLC=Limited Liability Company)は、2006年5月よりスタートした新しいタイプの会社です。出資者の有限責任(会社が倒産した場合、出資額まで責任を負うこと)が確保されますが、株式会社のように株主総会を開く必要がありません。出資者=社員の合意によって意思決定を行います。

合同会社は自分たちだけで、できるだけ自由に会社の運営をしていきたい場合に向いていますが、まだ新しいこともあって社会的な認知度は低く、意思決定に対立が生じた場合には、収拾がつかなくなる恐れがあります。合同会社は映画、アニメ制作など原作者、監督といった個人の才能が収益に結びつく会社に向いています。

合名会社、合資会社は昔からあります。これは個人商店が会社化したもので、家族経営の老舗の造り酒屋などに多い法人形態です。家族など信頼関係のある固定された少人数の経営には向いていますが、社会的認知度は低く、また出資者には無限責任があり、これは会社が倒産した場合、出資者は会社の損失の一切を被らねばなりません。ゼロからスタートしようというベンチャー企業には、これはちょっと危険ですね。

有限責任、社会的認知度、イメージ、スムースな意思決定方式などをトータルに考えると、株式会社で事業を展開するのが第一選択といってよいでしょう(株式会社についてはChapter1-2で復習してみましょう)。

(渡邉健吾)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

早稲田大学夏季一斉休業に伴うインキュベーションセンター閉室のご案内

早稲田大学夏季一斉休業に伴い、インキュベーション推進室事務所は8月11日(土)から19日(日)まで休業します。この間、事務所での直接のご対応のほか、電子メールや電話でのお問い合わせもお休みとさせていただきますので、ご了承ください。お問い合わせは、基本的に8月10日(金)までにお願いします。

これに伴い、インキュベーションセンターの共用スペース(オープンスペース、会議室、シェアードブース)もクローズします(個別の入居スペースは除く)。

よろしくお願いいたします。

起業の準備と法人設立 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter4-1

起業の準備と法人設立・第1回 最初にチェック! 起業に挫折しないための10のポイント

これまで、起業するとはどういうことか、起業する前に何をするべきかについて説明してきました。しかし、会社を立ち上げる前にも、準備しておかなくてはいけないことは、いくつもあります。

事前にどれくらい検討し、準備したかが、その後の経営を左右します。まずは、次のチェックシートで確認してみましょう。

(1)【起業への意識】起業しようという意思は明確ですか。どういう目的で、何をやりたいかはっきりしていますか。

→動機があいまいでは、壁にぶつかったとき、右往左往してしまいます。明確な目標があってはじめて、起業後のさまざまな困難を乗り越えることができます。
(2)【経験と知識】起業しようとする分野について、十分な経験や知識がありますか。

→未経験の分野での成功は難しいものです。学習や研究、アルバイトなど、これまでの自分のキャリアで習得、蓄積してきた技術や技能、ノウハウを生かせる分野で起業すると、成功率が高くなります。
(3)【継続は力なり】どんな苦労にも耐え、ビジネスを継続していく自信がありますか。

→まず何よりも起業に対する強い気持ちと、体力(健康)が必要です。加えて起業家には法律、経理、税務、労務などの経営知識と十分な金銭感覚が必要です。また、ビジネスに必要な勉強や雑事もおろそかにしてはいけません。
(4)【家族が大事】身近な家族の理解を得ていますか。

→起業前に必ずしなければならないことが、親や兄弟、家族の理解を得ることです。起業初期の苦しい時期には、親や家族の経済的、精神的な支えが必要です。また未成年であれば、親権者の同意を得ることは起業の大前提です。
(5)【オフィスや店舗】起業する場所は決まっていますか。

→立地条件の良い場所は費用負担が重く、ビジネスの採算性を損ないます。採算が合うかどうか慎重に検討しましょう。起業初期には各地にあるインキュベーションセンターを利用することも一つの手です。また、店舗を開く場合は、顧客の動線を意識する必要があります。
(6)【スタッフ確保】必要な人材を確保することができますか。

→事業が軌道に乗るまで人件費は重い負担になります。家族の助けやアルバイト、パートタイマーの活用を検討してみましょう。一方で、製品開発には優秀な技術者を確保する必要があります。友達づきあいの延長という感覚ではなく、先へ進むためのパートナーという意識が肝心です。
(7)【セールスポイント】顧客をひきつけるセールスポイントはありますか。

→自分がいいと思う商品やサービスでも、そのよさが顧客に伝わらなければ何の意味もありません。顧客を具体的に絞り込み、商品・サービスに顧客を引き付ける独自性を徹底的に追求しましょう。
(8)【お金の計算】収支計画をたて売上高や利益などを予測していますか。

→多めの販売予測、少な目の経費予測といった自己満足の予測に陥りがちです。ドンブリ勘定ではなく、同業他社の実績を参考にして、裏付けのある収支計画を立てましょう。もちろん、販売方法を具体的にしておくことも重要です。
(9)【自由な資金】十分な自己資金を準備していますか。

→起業を思い立ったら、まず着実に自己資金を蓄えることが大切です。借入金の返済負担はビジネスの採算性を損ねることがあります。また、第三者から不用意に出資を受け入れると、自由な経営ができなくなることもあります。
(10)【実現に向けて】ビジネスプラン(事業計画)を作成してみましたか。

→自分の描くビジネスのイメージを具体的な文や数字で確かめてみましょう。ビジネスプランを作成する意義は、以下のものがあげられます。①起業家自身が経営指針とする、②社内メンバーの理解と周知徹底を図る、③社外支援者の理解と協力を得る、④資金調達をする、など。詳しくは、Chapter3-1を参照してください。
自信がない、という項目があれば、まずはそのポイントについて、改善できる余地がないか、しっかりと検討しましょう。起業を始める前に改善するのと、始めてから改善に着手するのでは、後者のほうがはるかに難しくなります。

(10)までチェックが済めば、準備はすべて整ったといえます。それでは、いよいよ創業にかかりましょう!

(渡邉健吾)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

自分のアイデアを磨いて、見てもらおう! ビジネスプランコンテストのご紹介

インキュベーションセンタースタッフです。関東地方では梅雨が明けたとたん、猛烈に暑い日が続くようになりました。熱中症対策はもちろん大事ですが、気温の上下が激しいと体力を消耗しやすくなります。栄養と休養をしっかり取るようにしましょう。

さて、早稲田大学インキュベーション推進室では、6月22日より「第15回早稲田大学ビジネスプランコンテスト」の応募受付を開始しましたが、学外でも、さまざまなビジネスプランコンテストが行われています。

今回ご紹介するのは、東京都大田区が実施する「第4回大田区ビジネスプランコンテスト」。「モノづくり」「観光、商業・サービス」「コミュニティビジネス」のいずれかのテーマに沿って、(1)自ら考案したもの、または(2)既存の事業に独自の創意を加えたもののいずれかが対象です。応募資格は個人または中小企業者で、大田区の在住や在勤などといった制限はありません。

応募締切は8月31日(金)必着。早稲田大学ビジネスプランコンテストへの応募を検討している方で、上のテーマに合致するプランを考えている方は、こちらに出してみるのもよいかと思います。アイデア出しや書類のまとめかたがピンとこない、という方は、このブログで掲載している「起業ブートキャンプで鍛えよう!」をチェックしましょう。応募書類などは専用のWebサイトからダウンロードしてください。

コンテスト専用Webページ

▲コンテスト紹介専用Webページ

一人だけ、内輪だけでこもっていては、アイデアが広がることはありません。どんどん外に出ましょう。がんばる人を、インキュベーションセンターでは歓迎します!

事業計画・第5回 連載講座「プレゼンテーション能力を磨こう」Chapter3-5

事業計画・第5回 プレゼンテーション能力を磨こう

前回まで事業計画書の書き方を学んできましたが、その内容を第三者に説明する機会はこれからたくさん出てくると思います(資金調達、営業、ビジネスプラン・コンテスト etc.)。

せっかく精魂込めて作成した事業計画書も、プレゼンテーションでうまく説明ができないと、会社にとって重要な局面を乗り越えられない!!という事態も発生するかもしれません。

プレゼンテーションのキー・ポイントは、様々さまざまな視点から数多く存在すると思われますが、基本的に重要なのは、『こちらの考えていることをいかに正確に(印象強く)伝えられるか』ということです。

良いプレゼンテーションとは

重要なことなので繰り返します。プレゼンテーション(以降プレゼン)に重要なのは、『こちらの考えていることをいかに正確に(印象強く)伝えられるか』と前述しましたです。

これを聞く側の立場に言葉を変えると、『いかにわかりやすく、印象に残るプレゼンであるか』が、良いプレゼンかどうかの指標となります。

良いプレゼンの要素としては、大きくは「資料」と「説明」に分かれます。下記以下にそれぞれの良い例(聞く側の立場にとって)をあげましたが、この二つの要素が揃えば、より大きな効果が期待できるに違いありません。

資料

・内容が理論整然と簡潔にまとまっている。

・ひと目で要点がわかる。
説明

・ストーリー性があり理解しやすい。

・説明が聞きやすい。

・聞き手の興味を引き、疑問点を残さない。

プレゼンのための準備

上記の良い例を実現するためには準備も相応に必要です。筆者が初めて企業に就職した時には、上司や先輩からは、「最低でも実際のプレゼン時間の10倍の時間は準備にかけろ!」と教えられました。30分のプレゼンだったら最低でも5時間(300分)。1時間のプレゼンだったら10時間。準備には時間をかければかけるほど、資料の内容が熟成し、内容が隅から隅まで頭に入ることによって説明をする際にも自然に余裕が出てきます。

準備には「十分すぎる」と思われるほど時間をかけ、良い「資料」と「説明」作りを心掛けます。

要点とインパクト [資料]

資料にはインパクトのある数値や図表を使用し、できるだけ分かりやすく作成します。

説明を聞く人はこれから説明をする内容に詳しいとは限りません。

ひたすら読み続けなくてはならない長文は避け、相手に理解してほしい重要なキーワードはワンフレーズにまとめます。ひと目で目に飛び込んでくるような簡潔な言葉で、視覚的に強調することも効果的です。ただし、ページをめくるたびに数多くのキーワードが様々な形で強調されすぎていると、どれが本当の要点かわからなくなってしまうので、全体のバランスを考えて過度の強調は避けたいところです。

図1 資料は要点とインパクトが肝心

声は大きく丁寧に [説明]

相手に正確に印象強く物事を伝えるためには、資料と同様に、分かりやすいことがとても重要です。

プレゼンの際には、多少の緊張も手伝って、自分で思っているより声が小さく、早口になりがちです。相手により正確に伝えるためには、声を大きく、丁寧に言葉を発するように心がけましょう。また、その際に、相手がちゃんと理解をしてくれているか、相手の表情を見ながら説明できるぐらいの余裕を持ちたいものです。そのためにも、事前準備に十分な時間をかけ、資料を見なくても説明ができるぐらいに資料の内容は頭に入れておきましょう。

図2 説明するときには声を大きく丁寧に

時は金なり!

多くの場合プレゼンの時間は限られています。説明に1時間は欲しい内容でも、30分で説明を完結しなくてはならないような場合も多々あります。そのような限られた時間内で『こちらの考えていることを正確に印象強く伝える』ためには、前述の「資料」と「説明」以外にも、下記の点にも着目をしてみて下さい。

時間配分:一番伝えなくてはならないことを伝えないうちに時間切れになってしまってはあまりにも悲しすぎます。伝えなくてはならないポイントの説明に十分な時間をかけられるように構成を考え、事前に予行練習をしてペース配分をつかむようにします。

キーマン:聞き手の中には、説明した内容について中心となってジャッジをしたり、商談だったら最終決済権を持っているような「キーマン」が存在したりします。時間が限られている中で、聞き手全員の理解を得ることが難しい場合でも、キーマンだけにはきちんとこちらの伝えたいことを理解してもらえるように努力します。

質疑応答:プレゼンの中で聞き手から投げかけられる質問は、聞き手が興味を持ち、本当に知りたいことなので非常に重要です。質問の内容をきちんと理解して、丁寧な対応を心掛けます。また、急に質問を投げかけられた際にも慌ててしまわないように、事前に様々な質問を想定して、質疑応答の練習をしておくのも効果的です。

ワンポイントアドバイス

プレゼンテーションにおいては、「時間」がとにかく貴重です。せっかくいただいた貴重な時間を無駄にしないように良いプレゼンテーションを行って下ください。遅刻などはもってのほかです! また、プレゼンテーションの環境(パソコン、印刷物)も事前によく確認をして、当日に忘れ物や足りない物が発生しないように準備しましょう。プレゼンテーションデータのバックアップも忘れずに。

これで、ビジネスアイデアとブラッシュアップから、事業計画の作成まで、ひととおりのステップを終えたことになります。それでは、実際に会社を作るためには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。次週からは新しいChapter「創業前の準備」に入ります。お楽しみに。

(長町みはる)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

第3回入居者セミナーのご案内

インキュベーション推進室では、入居者を主な対象としたセミナーを定期的に開催しております。今月7月27日は、社会保険労務士の早川幸男氏をインキュベーションセンターにお招きし、「起業家向け労務管理入門セミナー」を開催いたします。

スタートアップの時点では、完全に独りだけ、あるいはごくかぎられた仲間だけで業務を行うことが多いもの。しかし事業が拡大すると、アルバイトなり社員なりとさまざまな形態があるものの、何らかの形で人材を雇用し、業務の一部を任せることになります。企業経営に際してコンプライアンス(法令遵守)を心がける以上、人を雇う際に注意すべきポイントについて、あらかじめ整理しておきたいものです。


開催概要

件名 インキュベーションセンター 第3回 入居者交流会
主催 早稲田大学インキュベーション推進室
日時 2012年7月27日(金) 17:30〜19:00
(18:00から交流会)
内容 講師:社会保険労務士 早川幸男氏
「起業家向け労務管理入門セミナー」
会場 インキュベーションセンター オープンスペース
参加対象 入居者、コミュニティ会員、ゲスト、推進室関係者 ほか
定員 30名程度

なお、参加申込みにあたっては、事前の参加予約申込みが必要となります。お手数ですが、参加ご希望者名、ご所属(早稲田大学学生は、学部学科名または研究科名と学籍番号)、ご連絡先(電子メールアドレス)をご記入のうえ、タイトルを「7月入居者交流会参加希望」として、インキュベーション推進室事務局まで電子メールにてご連絡ください。折り返し、推進室事務局よりご案内差し上げます。

事業計画・第4回 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter3-4

事業計画・第4回 売上と利益の計算はしっかりと

説得力のある事業計画を作るには、会社がどのように収益を上げていくかについて、数字を入れて盛り込む必要があります。また、書類を作るだけではなく、事業の見通しを立てるには、売上や利益などをきちんと把握しなくてはいけません。

事業計画の第4回となる今回は、計画の中に入れる損益のシミュレーションを行うためのツールを紹介しながら解説します。

売上と利益

会社では、商品やサービスを顧客に提供することでその代金を得ます。これがいわゆる「売上」ですが、売上が多ければ多いほど会社は儲かるというのは想像するにたやすいでしょう。しかしながら、売上のすべてが自由に使える「利益」になるかというと決してそうではありません。

会社を経営していくためには、経費や税金などの避けられない「費用」が必ず発生します。したがって、利益は売上から費用を差し引いたものになります。

売上が費用を上回り利益が出ればその会社は儲かっていることになり、逆に費用が売り上げを上回ると会社は赤字ということになってしまいます。

損益分岐点

それではどれぐらいの売上があれば、会社は赤字にならず黒字になるのでしょうか。もちろん会社によってその金額は千差万別ですが、赤字と黒字の境目の分岐点、すなわち「売上」=「費用」となる分岐点のことを「損益分岐点」といいます。

損益分岐点を算出するには計算式がありますが、そのためには、まず会社の中でどれぐらいの費用がかかるかを把握しなくてはなりません。費用は、「固定費」と「変動費」の2種類に分類されます。

  • 固定費:売上高や販売数に関係なく一定に発生する費用(人件費、不動産賃借料、償却費etc.)
  • 変動費: 売上高や販売数の増減に応じて増減する費用(仕入れ費、材料費、販売手数料 etc.)

費用が把握できたら、下記の計算式に当てはめて計算します。

損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 − (変動費 ÷ 売上高))

この式だけではピンとこないかもしれませんが、売上と費用をグラフにして表示すると、下のように視覚的にわかりやすくなります。

図1 損益分岐点

支出計画

売上が算出された損益分岐点を超えないと会社は赤字になってしまいます。つまり、損益分岐点売上高が会社にとっての「必要売上高」となるわけです。経営者はこの必要売上高を超え、さらに利益を伸ばすために努力をしなくてはなりません。

しかし一方で損益分岐点の計算式からもわかるように、固定費を押さえることによっても損益分岐点は低くなります。単に売上を伸ばすだけではなく固定費を押さえることによって、利益をあげることにも目を向けてください。 損益分岐点を意識して売上と支出の計画をたてることが非常に重要です。

ワンポイントアドバイス

会社を経営しているとついつい目先の売上ばかりに着目しがちですが、意外と支出の方が問題になっているケースが少なくありません。無駄な支出が発生していないか現状をよく把握して、押さえられるところはキッチリ締めていきましょう!

(長町みはる)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。

今年も熱い戦いが開幕! 早稲田大学ビジネスプランコンテストの応募受付が始まりました

早稲田大学インキュベーション推進室では、早稲田大学の学部学生、大学院生、若手研究者を対象として「第15回早稲田大学ビジネスプランコンテスト」を開催します。このたび、応募受付を開催しました。

早稲田大学が実施するコンテストでは、インキュベーション推進室のコンサルタントが、それぞれのメンバーないしチームに対して、個別に助言と指導を行っています。最初は荒削りそのものだったアイデアも、その指導によって、ぐんぐんと実現可能性が増していきます。賞を取ることもさることながら、そうそう簡単には得る機会のない、専門家のマンツーマン指導! これだけでも、十分に価値があると思います。応募方法の詳細については、募集案内の詳細ページをご覧ください。

最終的に選抜された優秀者4名は、自分のビジネスプランを大隈講堂で発表します。大勢の前でプレゼンテーションを行うための準備をすることで、自分の思うこと、そして考えることを、丹念に整理できるはずです。そして何より、学外の方も含めた多くの観客を前に、自説を開陳するのもまた、なかなか得られない機会です。

応募締切は、9月28日。夏休み中、頭の中身をフル回転させたり、みんなで話し合ったり、いろいろな勉強の際に得た知識を整理したり、さまざまな機会を基に、考えをまとめてください。みなさんのステキなアイデアが、ひとつでも多く寄せられるよう、お待ちしています。お申し込み、お問い合わせは、コンテスト事務局まで。

コアコンピタンスの明確化とマーケティング 連載講座「起業ブートキャンプで鍛えよう!」Chapter3-3

事業計画・第3回 コアコンピタンスの明確化とマーケティング

前回の連載では、市場調査について説明しました。市場調査はとてもたいへんな作業ですが、調査しただけで満足していてはいけません。調査結果を積極的に活用し、自社の市場における立場を明確にしてこそ、意味があるのです。つまり、自社の強みをはっきりさせた上で、市場調査結果をもとに商品やサービスを顧客に買ってもらうための戦略を立てる必要があります。

何やら難しそうに見えるかもしれませんが、「これを無視しては商売できない」といってもよい、重要なポイントです。では、順を追って説明してきましょう。

コアコンピタンスとは

市場調査によって、業界での自社の位置づけが明らかになりますが、ここから先はコアコンピタンスについて考える必要があります。

コアコンピタンスとは、「競合他社と比べて著しく高い能力」のことです。例えば、自動車メーカーの場合、このメーカーが「エンジン技術」を強みとしているなら、このエンジンの強みを生かして事業を展開していくことで会社を成長させるという戦略が立てられます。ここでいう「能力」とは、経営者や技術者などの個人能力を指すのではなく、事業を行う会社としての能力を意味しています。

ベンチャー企業におけるコアコンピタンス

一般的な経営論などの場合、コアコンピタンスについて説明があると、大企業における事例がよく採り上げられます。しかしベンチャー企業にとっての「コアコンピタンス」は、その意味合いが少し異なります。すなわち、企業が行う事業そのものよりも、起業家自身の得意技を生かすということになります。しかし、コア(核)となる強みがない場合、また技術やノウハウの蓄積がない場合には、コアコンピタンスを新たに作らなくてはなりません。

また、研究開発型ベンチャーでは、研究者は研究成果を生かした最先端技術ということもありますが、学生起業ベンチャーでは、ITスキルや発想力しかない場合も多いでしょう。先行他社、競合他社と比べて優位に立てるものが特にない場合、意識的にコアコンピタンスを創出するようにしなくてはなりません。要は「客観的に見て、これだけはどこにも負けない!」というものを持っておくことが大事です。インターネットの世界を例に取れば、検索結果を上位に表示させるSEM(Search Engine Marketing)やSEO(Search Engine Optimization)、Webサイトの分析能力、集客力の高いWebサイト構築力といったものが挙げられます。

マーケティング

市場調査をしてコアコンピタンスを最大限に発揮するために、マーケティングを考えます。マーケティングという用語は目に触れる機会が多いと思いますが、ここでは「顧客が求める商品やサービスを具体化し、その価値を顧客に認識させ、顧客が商品やサービスを購入したくなるような仕組みをつくること」と定義します。わかりやすくいえば、顧客にとっての商品やサービスの価値をどんどん高め、顧客の特性(職業、性別、年齢、所得、居住地、趣味嗜好、などなど)を考慮して購入意欲が最大になるように、いつ、どこで、何を、誰に、どのように提供するかを考えることとなります。

買ってもらえる仕組みができたら、次に顧客と自社の関係を決める必要があります。市場でのポジショニングを行う上で、まず市場特有の評価軸を抽出することが欠かせません。例えばアパレル業界の場合、高級品か低価格品か、フォーマルかカジュアルかなどの評価軸上で自社の立場をどこに置くかを決めることが求められます。

資金力の弱いベンチャー企業では、マーケティングを徹底的に分析し、少ないコストで最大の効果を得ることが重要になります。また、顧客が個人相手の場合(B to C)と法人相手の場合(B to B)では一次顧客との関係が変わってきますし、Web上でソーシャルサービスを活用する場合には実店舗販売とは異なった顧客との関わりが必要になります。

事業計画に落とし込む

会社を持続的に成長させていくためには、市場分析の結果とマーケティングから自社が最も優位に立てる戦略を策定する必要があります。事業計画については、顧客の分類と選択を行い、市場での位置を決めたら、4P(Product=製品、Price=価格、Place=流通、Promotion=販売促進)を確定し、具体的な行動計画に落とし込むことが重要です。

事業計画を作る際の主要なポイントについて説明してきましたが、企業活動にあたって、売上高や利益の算出と予測を盛り込まなければ、どんな計画を立てても“絵に描いた餅”になってしまいます。次回は、事業計画に必要となる基本的な数字について、説明します。

ワンポイントアドバイス

大企業とは異なりベンチャー企業は、事業をどのような方向にするかの自由度が高く、このため経営学の教科書に書かれているようなコアコンピタンスの概念をそのまま当てはめるのは困難です。しかし、市場調査を徹底的に行い、そこから競争力のあるコアコンピタンスを作り上げることは十分に可能です。いろいろな分析手法を活用し、自分ならではの事業計画を作成しましょう。

(耒本一茂)

本連載「起業ブートキャンプで鍛えよう!」は、起業を志し、会社をつくり、事業を自分でつくっていきたいと思う人に向けた、起業入門向けの連載講座です。早稲田大学の学生や教職員によるベンチャー企業を数多く見てきた、早稲田大学インキュベーション推進室のスタッフ(コンサルタント、事務スタッフ)が、さまざまな実例を基に解説します。読み進んでいくのに特別な知識は必要ありません。市販の参考書には載っていないノウハウを集めた、学生による起業を意識した連載です。なお、本連載における掲載内容は、各執筆担当者の個人的見解に基づくものであり、必ずしも学校法人早稲田大学の見解に基づくものではありません。